マイ・エレメント
監督/ピーター・ソーン
レミーのおいしいレストラン(07)では脚本と声優とアニメ担当をし、
ウォーリー(08)やカールじいさんのそらとぶ家(09)では脚本を担当したぴーたーそーん。
なので、この映画の上映前にカールじいさんの短編が上映されている。
日本語吹き替え版は
主人公のエンバー役に 川口春奈
もう一人の主人王ウェイド役に 玉森裕太
MEGUMIやサンドウィッチマンの伊達みきおなども声を当てている。
物語は、様々なエレメントが生活しているエレメントシティに火の国から1組の夫婦が到着するところからはじまる。
火のエレメントということで、先住の水、土、風らのエレメントたちから冷たい対応を取られる夫婦だったが、朽ちかけだが入居できる建物を見つけ、雑貨店として改装。いつしか彼ら夫婦の後に入植してきた火のエレメントたちを支える大切なお店になっていく。
そして2人の娘エンバーが生まれる。エンバーは水のエレメントに対して強い敵意を持つ父親と娘の成長を願う母の愛に包まれて成長。
しかしある日。運命の出会いを迎える。
監督自身の経験をモチーフにした作品ということで、アメリカが持っている移民への強い反発的部分とフレンドリーなアメリカナイズな部分の両方を演出的にしっかりと描いている。
監督の両親は韓国からの移民者であり、監督自身はニューヨークで生まれたそうなので、そのあたりの描写は監督の幼少期に受けたものを演出したのだろうと容易に想像できる。
そのため4つのエレメントの「他のエレメントへの奇異の目」という演出が国が抱えるメタファーであることは明らかであり、それは表向きは「自由で差別のない国アメリカ」をうたっていながらも、実際には細かなところで差別と区別を抱えている国の抱えるアンダーな部分の演出といえる。
そこに古い価値観により相手を受け入れす、敵意を持つ親世代とその親からの教育を受けた子供が持つ「思い込み」がいかに危険で間違っている可能性をもっているか…という部分は、大人こそが思考パターンを改善すべき部分ですよ…とメッセージを持たせているようにも見えてくるし、「あいつらはダメだ」「敵である」「できるわけがない」といった思い込みで視野を狭めている可能性があることを示唆しているといえる
その一方で、火のエレメントのエンバーと水のエレメントのウェイドが恋に落ちる…というロミオとジュリエット的展開は、対立構造がシンプルだからこそ、2人それぞれが心を寄り添えていくハードルの高さとそれをくりしていく展開にわかりやすさを加えているのに成功している。
加えて、この映画は親離れと子離れ。子育てによる親の思い込みと子供が抱えるプレッシャーと束縛。
そして本当の自分を見つけるためのきっかけを描いており、これは人種も世代も関係ない万国共通のテーマでもあるといえる。
それら
人種問題、移民問題、自由と責任。子育てと成長。をうまくディズニー+ピクサーらしく、うまくまとめた1本になっている。
そして吹き替え声優の2名
川口春奈
玉森裕太
だが、
声優初挑戦の川口春奈には驚かされた。思いの外ウマい
いや演技も十分できる女優ではあるが、エンバーの感情の起伏の激しさなどの演技が十分にできていた。
そして玉森裕太である。
2016年の「キング・オブ・エジプト」のときにはまだまだ荒削り感があった彼ではあるが、今から7年も前の話。
流石の演技っぷりである
ウェイドの優しすぎる感のある柔らかな雰囲気は彼の真骨頂であるかもしれない
その一方で、これと決めたら行動的な部分における声の抑揚やトーン。そういった部分の変化も十分に演技できていたのは、彼の俳優としての成長によるものだといえる
マイエレメントは家族はもちろん子どもも観て楽しめる
エンターテイメント作品としては安定の完成度
さすがディズニー+ピクサーの作品です。
「ソウルフル・ワールド(20)」以降コロナ禍であることとDisney+の契約者増加を見越し「あの夏のルカ(21)」「私ときどきレッサーパンダ(22)」と配信が優先だったピクサー作品。
前作の「バズ・ライトイヤー(22)」も劇場公開直後に配信を開始するなど劇場との確執を抱えたピクサーだが、ようやく劇場公開という大きなスクリーンで観られるようになった…ことを踏まえても多くの人が映画館で鑑賞をして次回作以降も配信優先ではなく、劇場公開がベースになることを祈るばかりです
1 comment
川口さん玉森さんを褒めて下さってありがとうございます。私もお二人共素晴らしいと思いました。オーディションで選ばれただけのことはあるなあと思いました。あとMEGUMIさんサンドの伊達さんもすごく良かった。見て良かったと本当に思いました。