リボルバー・リリー
長浦 京の小説を原作にした映画
監督/行定 勲
世界の中心で、愛をさけぶ(04)
クローズド・ノート(07)
今度は愛妻家(10)
劇場(20)
窮鼠はチーズの夢を見る(20)
などなど名作が多いが、実はアクション映画は今作が初
出演/
綾瀬はるか、
長谷川 博己、
羽村 仁成、
シシド・カフカ、
古川琴音、
清水 尋也、
ジェシー、/SixTONES、
豊川悦司、
野村萬斎、
佐藤二朗、
阿部サダヲ、
石橋蓮司、
1924年。関東大震災から1年が経過した東京は、復興が進みモダンな建物が増えて賑わっていた。
小曽根百合(おぞねゆり)は過去に3年で57人の殺害に関与した元スパイだがいまは、銘酒屋の女将をしている。そんな彼女は新聞で見た一家惨殺事件の現場を見に行くが、ふとしたことで、家族を殺され、父親に託された、あとある鍵を握る少年を助けることから、陸軍に追われることになるのだが…
原作小説を まとめようとして頑張った形跡があちこちに見られ エンターテイメント映画として、キャラクター映画として作り上げようとする熱量を持った作品。
その一方で 映画自体が全体的に暗くなりがちで ダークヒーローを作り上げようとする キャラクターの方向性が微妙にブレてしまうところがある。そうなってくるとエンターテイメント性が弱くなっているのが惜しいところ。
一言で言うならば 昔 ハリウッド映画で作られた 「ソルト(10)」という作品に ベクトルは似ているのかもしれない。あちらもソルトという女性スパイのキャラクターを作り出した映画だが、キャラ付けとストーリーがうまく噛み合わなかった。もっとも「ソルト」の場合はトム・クルーズを主役に当て込む流れだったのが、女性主人公に変わったのが最大の原因だが…
謎めいた展開やミステリアスな雰囲気作りはある程度成功しているがゆえに、シナリオそのものが勧善懲悪のわかりやすいものではなくなっている。いや勧善懲悪ではあるのだが、悪い奴らのAと悪いやつらのBの区別が付きにくいのがややこしい原因かもしれない
主人公の綾瀬はるかが抱えてる 深い 辛い 悲しみは フラッシュバックで思い出せる一方で蓋を開けてみると 「まあ そらそうだわな」という、ありきたりなオチになってしまうところがなんとも深みが足りなくなってしまうところでそういう流れで言うと 全体的にもっとシンプルかつ 分かりやすい シナリオにした方が良かったのかもしれない
太平洋戦争が起きる前の 大正時代を舞台にしたということもあり スパイ映画としては定番の新しい武器といった「見ている側を驚かす」というアイテムがほぼなかったところが 何とももったいないところである
また日本海軍日本陸軍との間の対立とか関係性などの「設定」の説明が非常に少なく、若い人を巻き込むには 全体のキャラクターの位置付け 時代背景 そういった部分が説明不足があったことは否めない
その一方で 俳優 それぞれの素晴らしい演技力によって140分間見せ続けられた部分はある
俳優たちの演技によって映画が支えられた部分があったことは紛れもない事実で 綾瀬はるかの演技力もしっかり 長谷川博己の演技力もしっかり そして ゲストとして頂けたジャニーズ系の若手俳優 羽村仁成やジェシーなどの演技もしっかりはしていたものの 彼らのキャラクター性が 十分に活かせたシナリオでなかったことは 欲しいところ
行定勲監督ということで 観客の年齢層は高めだが途中で寝てる人を見かけるなどやはり 分かりやすさが足りなかったと言えるだろう。
エンターテイメント作としてもダークヒーロー作品としてどちらにも振り切ることができなかった、良くも悪くも八方美人的なシナリオが非常にもったいない作品。
小曽根百合(おぞねゆり) という一人のキャラクターを生み出すには十分だったにも関わらず 続編に向けての謎掛けのジャーマン・スープレックスがなかった分だけ またマシかもしれない
綾瀬はるかの演技はもう観ていて安定感なので、言うことはなし
東映単独映画としては2作目の出演だが、もうすこし彼女のらしさをピックアップできる映画を用意してあげてほしいところ。もちろん「レジェンド&バタフライ」も良かったし、今作でも 綾瀬はるかでなければ出来なかったであろう作品である。
長谷川 博己(はせがわ ひろき)とは「はい、泳げません(22)」に続いての共演で息のあったところを見せてくれるし、やはりうまい役者が主役となると安心して観られるところは多々ある。
そして意外と言っては失礼だが良かったのが、羽村仁成とジェシーの2名
羽村仁成は救出される少年役だが、こういった「救われる側の少年として鬱陶しい感」と「主人公に一生懸命沿う感」の両方が演技でも出来ていて、びっくりした。
そして古川琴音
役柄的に19歳を詐称する17歳の役だが、そう見えてしまう不思議さw
演技の良さも含めて古川琴音の助演ポジションは圧倒的に印象に残るキーバイプレイヤーといってもいいだろう。
さらに シシド・カフカのクールな役どころだろう
銃さばきも見事で、ライフル系の銃をうまく取り回したアクションは見応え十分
プラス、ダブルハンドガンのアクションもあって彼女の新しい魅力を見えてくれてる。
あと一瞬でしか映らない 鈴木亮平の出番w
たとえば 様々な戦闘の傍観者としてあのキャラクターが映ったりしていれば、ラストのワンカットがもっと活きたと思えるだけにもったいない限り
とはいえ、1970年代よりも前の時代の設定の映画で、役者の白い歯が見えすぎるのはいかがなものか…というのは今回も感じてしまうところ。
どんなにハードボイルドな展開であっても白い歯がキラリと見えてしまったとたんに、ちょっと現実離れ感があってもったいない。
あとは銃の構え方が完全ストレートアームすぎるところは惜しい…
劇中でも銃を構える際にはストレートアームにならないように…と言ってる割には、ストレートアームで銃を撃っているシーンが多々見受けられたのは惜しいところか?C.A.Rシステムとまでは言わないが、もうちょっと…ねぇと思える部分は多々ある。
オカシイ「奥様は取り扱い注意」でもストレートアームが気になったゆえにそこはとても惜しいところだと言える