バッドランズ
直木賞作家・黒川博行が書いた原作小説「勁草(けいそう」を大胆二アレンジをしたものの、映画としては見事にまとまった1本
まさにクライム・サスペンス映画として面白さとスリリングさのバランスが取れていると言える
監督/原田眞人
ガンヘッド(89)
金融腐蝕列島(99)
クライマーズ・ハイ(08)
日本のいちばん長い日(15)
検察側の罪人(18)
ヘルドッグス(22)
などなど
エンタメとクライム・サスペンスの融合がうまい監督
出演/
安藤サクラ
山田涼介
生瀬勝久
吉原光夫
江口のりこ
宇崎竜童
特殊詐欺グループで管理職的ポジション、三塁コーチの役割を担っているネリ(安藤サクラ)。今日も受け子を従えてカモにする相手を確認し、現金受取現場へ向かうが、警察の匂いを感じ取り中止とする。
上司である高城(生瀬勝久)とも対等な口の聞き方をするネリだが血が繋がっていない弟ジョー(山田涼介)にも仕事を分配するようにお願いをするが受け入れてくれない
一方の警察は、特殊詐欺グループを追求しようと様々な方法で包囲網を狭めようとしていた。その中には、ネリや高城がつかった車の特定にまで至るのだが……
まず原作と設定を大きく変えた部分は違和感が少ない
それは脚本の練り込み具合の妙ともいえるところ
これはこれで素晴らしい…
安藤サクラの演技はもう安心感
関西弁もネイティブさは若干弱く感じるものの、十分なイントネーションであり違和感もほぼなく、オラオラ系も十分である
早口でまくり立てるシーン
仲間への気遣いを見せるシーン
仕事に対して冷静沈着に対応するシーン
などなど全てにおいて ネリ というキャラクターの構築を考えると安藤サクラ以外は考えられない…といっても過言ではない
表情や声の変化も含めて、安藤サクラの女優としての素晴らしさを見せつくてくれる作品である
昨年の「ある男」でも魅せてくれる演技ではあったが、今回はよく動き、よく喋る。
そして山田涼介
この作品でも一段と成長したのではないだろうか?
過去作での映画は恵まれていた問は言いづらいところだが、それを吹き飛ばすだけの魅力あるキャラクターを演じきっている
「暗殺教室(15-16)」では主演であるが、まだまだ役者としては荒削り感があった
そして
「鋼の錬金術師(17-22)」でも きちんと演技としてはできていたのに、漫画原作であることのハードルの高さ。
さらに「大怪獣のあとしまつ(22)」でも、演技はできていたのに、予告と本編のギャップなどの悪評による映画作品の批評などでは苦しんだ彼だが、ついに役者としてもかなりの魅せる人として注目度がアップすると言ってもいいだろう
ちょっとサイコパス的なキャラクターでありつつも、
実は姉思いで、人情も厚い
その一方でどこかバカでヌケているところもある
愛されキャラ的だが、映画そのものがノワール展開なので、アイドル的色合いよりもはるかに
役者としてのポジションが求められた監督の思いには十分答えていると言える
さらに宇崎竜童がいい
あの冒頭のイカレ爺いだった人が、覚醒し冷静沈着かつ対応策を完遂するあたりのかっこよさのギャップは素晴らしい
そのあたり、お酒が抜けることで覚醒する…という ベタと言えばベタな部分も含めて、宇崎竜童らしい
シブオジ的ポジションは見逃せない
そしてシークレットゲストのアロハシャツのあんちゃん
あのシーンだけでベルドッグスを思い出してしまう
ラストの映像は見事な伏線とともに回収される…という意味では気持ちのいいラスト
原作とは全く違う展開のラストではあるが、映画というエンタメ性を考えた場合
あれは正解だと思うし、そうか、見事に回収した!と評価をしたくなるラストである
その一方で、説明不足的な部分もいくつかある
東京の投資家の元でいた背景などは言葉の端々に感じさせる台詞はあったものの
決定的に狙われる理由がわかりにくい
キャラクターの背景や過去に関しては想像で補完するしか無い…というのはあるかもしれない
ただ、
クライム・サスペンス映画としてはうまくまとまっている
140分を超える映画ではあるが、観ているとながさは感じなかった