今月まとまった、全米映画俳優組合と全米映画テレビ制作者協会の“暫定合意”。なかでも、俳優組合が特に訴えていたのは「AIからの保護の強化」でした。
今のAI技術では、俳優を若返らせることや、亡くなった俳優を再現することもできます。また、吹き替え版を演者・本人の声で再現することが容易になっていて、実際にそういった技術を使った映画がアメリカで公開されています。
そのため、AIの脅威が高まっているとして、100日間を超えるストライキが行われました。その結果、暫定合意書には、AIに関しては「俳優の見た目や声のデジタル複製を作成・使用する場合は同意が必要」「デジタル複製のみの出演でも、俳優は報酬を得る権利がある」と明記されました。
進化したAIは映画界を変えるのか。俳優が置かれた現在地とは。俳優・渡辺謙さんに聞きます。
(Q.渡辺さんも組合員だが、どんな思いでストと向き合いましたか)
渡辺さん:「新作の公開が迫っていたので、そのPRをどうするんだという状態で、日本でずっと待機していたので、活動には大きく参加していません。その間に公開された映画全てが、俳優はPR活動に参加できませんでした。色々な弊害もありました。やっぱり組織が大きいんですよ。エージェントにもアシスタントが携わりますし、PR活動をするにもパブリシストがいて、そこにもアシスタントがたくさんいます。その人たちが皆、解雇されたり。そういう影響も出ていました。すそ野は本当に広くて、そこで従事している人も多いです。ここ5年ほどで、配信の作品がかなり増えました。しかも、コロナで配信の数が異常に増えました。そうなると、今まで配信事業者と契約していたことと違う事態がたくさん起こってきて。そのことと、AIをこれからどう使っていくか。大きな2つの問題がストライキの大きな焦点になっていました」
(Q.団結して訴えた結果、一定の歯止めが効いたと思いますか)
渡辺さん:「とても難しいと思います。『クリエイター』という映画でも、僕はAIをやったので、頭の半分は機械でした。でも、撮影現場は顔にドットだけつけて、普通に撮るんです。後でVFXで全部加工できる。それくらいの技術革新が来ています。撮影時に人件費や撮影日数を抑え、後で加工する方がコストは断然安い。プロダクションはどちらを選ぶか。これから先、そうした技術の応用はかなり進むと思います。ただ、それに同意が必要というのは、とても重要なことです。ちゃんと俳優が分かったうえで参加しているかは、とても大きいと思います」
(Q.俳優の仕事がAIによって脅かされているという実感はありますか)
渡辺さん:「10年間は、そんな時代は絶対来ないと。魂を揺さぶるものって、僕らは演技として、心として伝えていくから、機械に取って代わられないと固く信じていました。ただ、ちょっと自信がなくなりました。それくらいのイノベーションがあるんだと、今は思っています」
(Q.AIはデータを学習できますが、人間を深掘りしていくのは、人間にしかできないと思いますが、いかがですか)
渡辺さん:「観客そのものが、例えばアニメーションやフルCGでもいいやという時代が来るかもしれません。特に今の若い世代の人たちは、ある意味、その方が感情移入できるという人たちが増えています。そうすると、僕たちが『それだけは伝えられるよね』って思っていることが、世代間で『あれ、アニメーション・CGの方が勝っちゃうんだ』という時代が来るかもしれないというのが、ちょっと不安ですね」
渡辺さんが出演している最新作『ザ・クリエイター/創造者』は、AIをテーマにした未来の世界を描いています。舞台は遠くない未来。ある日突然、AIが暴走し、核爆発を起こします。人類とAIは共存できるのか。渡辺さんは、AIのリーダー的存在を演じています。
(Q.渡辺さん自身がAIになっていますね)
渡辺さん:「心というか、感情を持ったAIです。役を作っていても、AIってどういう感情を持つのかは、一つフィルターがかかるところはありました。でも、基本的には、学習能力が高いので、人間と同じ感情を持っていると、最終的には思いました」
(Q.AIが人間性を手に入れた時、人間とAIは共存できると思いますか)
渡辺さん:「今もうすでに岐路に立っている気が、僕はします。イノベーションが進めば便利になりますよね。人が求めれば、どんどん便利な方にいきます。例えば、店員がおらず、全部キャッシュレスでできる、24時間営業の本屋さんのニュースがありました。本屋の店員さんが社会にいらなくなるって、僕は嫌だなと。あれも社会の一つの大きな文化だと思うので。俳優組合のストといった大きなことではなくて、私たちそのものが、この技術がいるのかいらないのかを考えて選択していかないと。『クリエイター』のように、いざそうなった時に『AIは全部排除しなさい』という政策を取らなければいけない時代が来る前に、ちゃんと僕らは選択をしていきたいと思います」
(Q.映画業界以外で仕事をする人間も等しく、自分たちの仕事って何なのだろうと本気で考えないといけませんね)
渡辺さん:「最近、ニュースもAIで読まれてたりするのって、ちょっとどうかと思いますよね」
また、映画を超えた”世界のいま”についても語りました。
(Q.渡辺さんは戦場を舞台にした作品にも多く出演されています。技術の発達によって、今起きている戦争が映像で見えることについて、どう感じていますか)
渡辺さん:「大きく変化したのが、僕は湾岸戦争からのような気がしています。あの時に、空を飛ぶミサイルや閃光を身近に感じて、その先に爆弾が落ちて爆発する。イスラエルとハマス、ウクライナとロシアのように、お互いの正当性を主張しあい、世論をどっちの味方につけるか。そこで失われていく命がおろそかにされて、情報戦だけ。僕らは何もできないので、どっちを信用するか、どうするかと思うのですが、どちらの側も多くの人が命を落としているという現実が、見えづらくなってきている気がします」
(Q.今の戦争の見え方と、自分が演じている役を対比して考えることはありますか)
渡辺さん:「去年2月に『ザ・クリエイター/創造者』の撮影をタイで行っていました。その時いきなり、ロシアがウクライナに侵攻したというニュースが流れてきました。撮影現場に問題はないので、撮影は始まっていますが『あっちからミサイルが飛んできます』というアナウンスを聞きながら、それに怯える演技をしている訳ですよ。ちょっとシラケましたね。シラケたというと語弊があるんですけど、本当に今、キーウにはミサイルが飛んでいるんだよな。俺たちは今、何を感じ、何を演じれば良いのか。一瞬、気持ちが冷めました。それくらい、現実の重さと映像とを、僕らはどう埋め合わせたら良いのか分からなくなってしまいました」
(Q.そんななかでも、俳優だからこそできる仕事もあると思います。演じながら伝えるメッセージはありますか)
渡辺さん:「『硫黄島からの手紙』という作品をやった時は、実際にそこで命が失われていくんだということを、僕らはどうきちんと伝えられるかを、クリント・イーストウッド監督と一緒に作れたような気がします。本来、戦争はこういうことなんですという“事実”ではなく“真実”みたいなものを、僕らは映画を通して伝えていくしかないと思っています」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
49 comments
AIの普及で淘汰される危機が有る職業って世の中には沢山有ると思う。
それを選択するのは開発側で無く人間なのは今の所まだ希望が持てる事だけど、それも時間の経過で思考が変わるはず…
極論、本当にダーミーネーターの世界が訪れる可能性も有るのかも…
情弱なんだろうな
ストライキの期間>ある人の結婚生活の期間 なんか凄いな
アナウンサーは俳優以上に危機感感じてるかもね~
でもやっぱこうやって議論というか建設的に話し合ったりできるのが人間のいいところ
感情持って知能が高まっても、彼らAIは人間じゃないんだから必要以上に感情移入しちゃダメなんだろうけど
アトムみたいのがガチで誕生した時に、アトムに冷たくできるかっていえば、そりゃ仲良くしたいよな
無法AIが然るべく規制されていけばいい
書店員やキャスターを用意せずテクノロジーで代用する選択肢があっても損はないと思う
日本ではAIなんて対して導入されてないだろ
アメリカの問題を取り上げてまるで日本も危機みたいに変換するなよ
IT後進国は進化せず問題にも直面しないから発展が遅れるw
もうCGI映画が人間の映画より勝っているんじゃないかな.。仕方ないよ人は面白い方を撮るでしょ。実写化とか今は厳しいからなぁ。
別に、趣味ならいくらでも出来る。むしろAIのサポートで誰でも出来るようになる。
みんな色々言ってるけど、本心はお金をくれってだけだと思う。
幸福の下位に便利さ(幸福を得るための手段)があるはずなのに、便利さを選択することで幸福を損なうことを多く体験しています。
例えば今はストリーミングで聴きたい曲のほとんどをすぐに聴くことができますが、それ以前のCDを厳選して購入していた時の方が幸福感が高いように感じます。
これは「昔は良かった病」成分も多少はあるかもですが、やはり音楽そのものの価値も下がってきたように感じます(その分ライブの価値は上がりましたが)
これは本にしても映像作品にしても商品購入に対しても、個人差あれどそれで得られる幸福度は全体として下がってきている。
これからは無思考で便利さや低価格を選択するのではなく、「《どうしたら幸福なのか》を考えて選択する」ということが必要だ!
と、便利さばかりを求める自分に対して感じています。自戒を込めて。
渡辺謙さんによるわかりやすいAIとハリウッド事情の説明だった。 阪神優勝においても語れる広い範囲で話せる素敵なゲスト回でした。
レコードができた時もテクノロジーによって仕事を奪われてはならないと演奏家による反対運動が起きた。しかし今では権利関係を整理した上で、当たり前にレコード・CD・配信による楽曲販売が行われている。AIも全く同じ過程を辿るでしょう。
こんなことしても、ストライキなんてしないAIの良さが引き立つだけだろう…
しょーがなくて、人は楽な方向に行く
人はいつの時代も進化し、淘汰されるものは淘汰される
彼らはおそらく
ドラクエシリーズで一番好きな作戦「命令させろ」で愛車はMT車で拳銃はセミオートよりもリボルバーを愛する人種なんだろうね
AIより このキャスター
ジャニーズ問題に真摯になれ🥵
色々お話されていらっしゃるようですけれど、日本において、高齢化社会に進んでいっている現実を考えると、人口が減り続けていくわけですから、否応なく、好き嫌い関係なく、AIやロボットに代替されていかざるをえないし、そうなっていかざるを得ないだろうなと思いますね。
もうこのニュースも、AIのアナウンサーで事足りるし、その内、現実の人間とも区別がつけにくくなるような気がします。
企業は、人件費がかからないようにすることで、企業を維持していかざるを得ないし、実際に、あらゆる場所で、あらゆる業界で、それが進んでいる。それが、現実ではないか?と思いますね。
技術革新は、もはや誰にも止められない。そんな気がしています。
受け手のほうが細やかな機微を読み取れないようになっている(わかりやすさが大事だと感じる)、って変化もあるのかなー。
テレ朝も大西いらんなぁ。古館のAIの方が遙かに優秀だから、そうしたほうがいい。
けんさん、目力すごいな
そもそも感情移入できるほど演技力のある俳優が少ないのが問題
乏しい演技力を演出でカバーできる監督・演出家も少ない
演技力のあるモーションアクタ―と声優を使ってCGIで美男美女を動かすのが最適解になってもしょうがない
ってこれアニメじゃん?
可否の本音は発言出来ないよ。疑問符つけたら、アメリカの地を踏めなくなるしな。
俳優やタレントさんは、スキャンダルのリスクがあり、AIは、全く無いから、メーカーは、大変安いAIを選ぶって言ってたな。
ニュースは事実のみをAIが24時間放送したらええやん。偏向報道しないように仕組みや取り上げ方もオープンにしてね。
映像作品制作上の劇的な革命が起きているのだろうね。見たこともない映像や革新的な作品を人類は見ることになるかもしれない。人類がAI、マシーン機械から疎外されるとは、もう言えない時期にきている。
AI税で調整すればいいんじゃない
いずれ「AI」も一生命体として扱われることも踏まえれば、今更ながらに、「実写がアニメやCGより優れている」とかを語る自体がおかしいと思います。
むしろ、ユーザーが見たいのは作品であるという根本的なことを、忘れているのでないかと思った次第です。それに、動画の編集や製作ソフトが時代と共に高度になり、業務を簡素化し、製作コストを少なくしてきたことを考えると、編集専門のプロダクション会社も増えてくると言うことですので、逆に、俳優仲間で実写化したい作品を選定し、プロダクション会社を選択するという時代にもなると言うことだと思います。
(例)→「俳優仲間で実写化したい作品を選定」→「自分達が納得するプロダクション会社を選択」→「作品の完成」→「Youtubeや映画館などで直接流す(放送会社を経由しない)」など…。
ちなみに、ハリウッドの俳優達の協力も取り得て、日本の「消費減税(国1%、地方3%)」と「法人税と所得税等の累積課税の増額」、「デフレの時に国債(=国庫債券、一般市場に貨幣を投入する行為)を発行する」などの景気を良くする改善をし、日本人の人口を増やして、多くのハリウッドの作品を楽しめるようにすることが大切だと思います。
AIはストライキせんしそっちでいくかぁ
てなるに100ペリカ
機会仕掛けの感動なんて、求めてない。
車が人力の仕事を奪ったように、需要の変化じゃ無い?
科学(AI)の進歩に人類は逆らえないかなと思ってます。
雇用主側からすると費用安いし、スキャンダルも無い。今後もっと表情とかもリアルになったらAIの名俳優みたいなのも出来るかもね
今回のストライキは成功に終わったけど、こっから先俳優側も変化せざるを得ないと思います
7:13 謙さんの言葉から、事の重大さを感じました。
役者の成長や、年相応の役を演じているのを見て、一人のファンとして、共に人生を歩んできた事を実感出来る日が、いつか無くなると思うと残念です。
よくAIを神にしようってコメント見かけたりするが、本当にそれでいいのかねぇ……🙄
このストで俳優の外見の利用許可と加工に対する報酬の支払い義務を課しても結局は自分の首絞めるよ。外見良いだけのモデルの外見スキャンしてボディスーツ着せた役者の表面にCGIテクスチャ貼って声はAIにすればギャラいくらでも叩ける。俳優は外見、演技、声全て一体の人格として作品製作の過程で人格分割、変更されない権利を主張すべきだったのに、使用料みたいな金銭対価に自分の人格を売り渡すから失業するんだよ。
メイキングを見なければ気づかないだけでCGが使われてる場面はすでに溢れてて、ブレランのレイチェルとか、ワイスピのポールとかCGって分かってても信じれない。
AIがあのCGを作れる様になったら、大規模な現場自体が無くなるだろうけど、とはいえ実写が作れなくなる訳でもなく、作りたい人は作りづけるから実写は残る。
あと低コストでも所謂大作と遜色ない作品が作れるようになれば、どのジャンルにも傑作が溢れるというメリットも出てくる。
最終的には、各々がマイAIの生成物で暮らす時代が来て、殆どの会社が人を雇う必要がなくなり、人間はベーシックインカムを貰いながらAIで映画作ったり遊ぶ時代が来るんだよ
数年前に私自身、個人が趣味で書いた小説でAIによる未来の物語を描いて公開してるけど、もしもAIが俳優になったりした場合、メンテナンスをしたりするのが人間の仕事に代わるものだと思っています。
時代には逆らえんよ。
労働者はいらなくなる。
かっけー
結局これからの若い世代が何を求めていくかで変化していくと思う。
AI脅威に共感です!
最近アニメや漫画やゲームが盛り上がってるのも無関係ではないよな…この分野は将来性がある
それ以前の問題で、そもそもハリウッド自体が面白くなくなって久しいのですがそれは……。
ザ・ロックやムーランルージュ等の超名作は元より、ウォンテッドやキングスマン等の面白い脚本がほとんど出てこない。
日本映画もヒット作はアニメかゴジラしかないし、呪怨やリングの大ヒットが懐かしすぎる。
まずキャスターが必要なくなるので消える。
Ai技術者の価値は高まってる訳で、生まれる産業も多いんだよ
自己進化型の生物の様なAIなんてまだまだ夢だし、物理世界で活躍出来る汎用型の自律AIもまだまだ夢ですねえ
役にのめり込んだこそ出てくる生身の俳優のアドリブによる名シーンってのが、そのうち無くなるんかねぇ・・・
結局は便利さが優先され競争の圧力によって技術は浸透してしまうと思う。とはいえ考えてみればアニメなんかは生の被写体が要らない映画であり、ボカロはボーカリストが要らない音楽だったりするわけで、すでに生の役者が省かれた技術はあるよね。現状のように実写映画と共存したり融合したりする感じに落ち着くんじゃないだろうか。
やろうと思えばできるけど、元となる素材は絶対必要になるし、俳優の仕事なんてAIに奪われない仕事の上位だと思うけどね。全ての映画を学習させて、作りたい映像を作るってそれおもろいのか?映画を作る仕事として。なんか違うよな。むしろ医学の分野に活用してもらいたい。21世紀の今でも相変わらず医者個人の経験による診断で誤診連発。服用する薬もそれが適切なのかもあやふや。特別な技術が必要な外科医意外は膨大なデータで精度の高い診断が下せるAIに診断して処置してもらいたい。そうなったら普通の医者はいらないそうだけど、段階的には医者がAIを使って患者に伝えるっていう形になりそう。
不倫などの問題行動もないし、俳優は全員AIに代わっても良いと思う。
映画やドラマは夢の世界だからひたすら夢だけ見たい。
あと最後のコメントは的はずれだと思いました。「選び取る」ことなんてできないと思いますね。
自然とできる方が選ばれるだけ。
AIが問題ではなく、AIで生じた利益の分配が問題。