秋田を代表する発酵食品で、県の内外で人気が高い「いぶりがっこ」。食品衛生法が改正されたことで、この伝統食に変化が出始めている。
「いぶりがっこ」は、大根をいぶしてぬかで漬け込んだ伝統的な漬物。
2021年6月に食中毒などの対策を強化するために改正食品衛生法が施行されたことで、漬物を製造・販売するためには保健所の「営業許可」が必要になった。生産者が製造を続けるには、加工施設を改修するなど設備投資の費用がかかる。
当時、生産者を対象にしたアンケートでは、300人のうち4割が高齢化などを理由に「廃業」を考えると答えた。
2024年5月を持って猶予の期間「経過措置」が終了し、改正法が完全施行される。いぶりがっこの産地・秋田県横手市山内地区の生産者たちは、アンケート結果から一転、多くが「継続」の道を選んだ。
横手市いぶりがっこ活性化協議会・佐藤健一会長:
「予想以上に県から補助金が出たために、ほとんどの人が継続してやると。ほとんどやめる人がいないのではないか」
横手市いぶりがっこ活性化協議会のメンバー約40人は、今後の販売継続を決めている。生産継続の懸念材料であった数万円から数百万円の設備改修の費用を、県が3分の1、市が6分の1補助する体制が整えられたことが大きいようだ。
一方で、近い将来に必ず直面する課題は「法改正」だけではない。
横手市いぶりがっこ活性化協議会・佐藤健一会長:
「一番心配なのは後継者。年を重ねるごとに高齢化がどんどん進んでいけば、どこかで後継者を育てる必要が出てくる」
生産者の多くが65歳以上で、高齢化が進んでいる。多くが継続を決めた中、別の選択をした生産者もいる。
20年間いぶりがっこを生産している高橋一郎さん。加工場を改修するためにかかる費用は約10万円。補助金を活用すれば「費用の負担」は解決するようだが…。
高橋一郎さん:
「今シーズンからは、全面的に漬物の販売はやめる。一番大きな理由は、高齢になり体力が続かなくなったこと」
高橋さんは81歳。いぶりがっこの販売をやめたのは「後継者がいない」というのも大きな理由だ。
高橋一郎さん:
「客から返ってくる言葉が次の年のやる気につながっていた。冬のなにもない時期に、小遣い以上のものが入ってくることが、この上ない喜びだった」
高橋さんは、いまも趣味でいぶりがっこ作りを楽しんでいる。
高橋一郎さん:
「第2の人生としては、すごく楽しい時間を過ごした。これからはちゃんとしたものを作れば、いぶりがっこの文化を展開できると思う。やる気のある人は大いに頑張ってもらいたい」
横手市いぶりがっこ活性化協議会・佐藤健一会長:
「本場・山内と言ってくれるのが一番大きいので、今後文化を守っていくためには、後継者不足が一番の大きな課題」
横手市は、担い手育成に向け、「よこて農業創生大学校」に4月から新たに「いぶりがっこコース」を設ける。
山内地区は、おのおの代々引き継いだいぶりがっこの製法があり、門外不出なのも後継者が育成されない要因の一つだ。
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もっと味で美味いもの作って、だれでも美味しく食べられるもの