碁盤斬り
監督/白石和彌(しらいし かずや)
凶悪(13)
孤狼の血(18)
孤狼の血LEVEL2(21)
死刑に至る病(22)
若松孝二監督の弟子だけあってバイオレンスな描写が上手い監督
出演
草彅剛
清原果耶
中川大志
斎藤工
國村隼
古典落語「柳田格之進」をベースにした時代劇映画ではあるが、落語を知らない人でも見やすいシナリオになっている。
基本は落語なので、人情噺になるものの
加藤 正人(かとう まさと)の脚本力と草彅剛の演技力で見事な時代劇へと昇華されている。
浪人の柳田格之進(草彅剛)は、娘・絹(清原果耶)と慎ましく暮らしている浪人。勤めていた藩の冤罪により江戸に引っ越してきた彼は、その日の米にも困る生活だが清貧ある暮らしを続けている。
そんな中、趣味の囲碁をたしなむために訪れた囲碁屋で傲慢な打ち方をし常連客をカモにする萬屋の主人・源兵衛(國村隼)と対局する。盤面はどちらが有利ともつかないように見えたが対局する2人には勝敗が見えていた。が、柳田は最後に打つのをやめてしまい負けを告げるとその場を去るのだった。
ある日、萬屋での騒動が起き、それを手助けする柳田。お礼にと萬屋が家を訪問した際にふとしたことで囲碁の勝負になることに。その際の会話で萬屋は柳田の生き様に触れ、いままでの商売のあり方を改める。
いつしか柳田と萬屋は囲碁を通して親密となるが、とある日冤罪事件の真相を知った格之進は仇討ちを誓うのだが…
まず注目はカメラと照明かもしれない
カメラマンは福本淳さんで
照明は市川徳充(いちかわとくじゅう)さん
このコンビによる照明がなんとも素晴らしい
また、彼らが作り出した映像美にOKを出した監督もすごい
自然光も照明も使いこなしているとおもわれるが、この映画の世界観に見事にマッチした映像を作り出している。
特に影を多用し、陰影を強く出しているのは、まさに電気による照明がなかったであろう当時の雰囲気づくりともいえるし、陰影が強すぎるのに、どのキャラクターなのか?がすぐに分かるほどの角度による撮影
これはもう見事いがい言いようがないほどの素晴らしい映像
出演俳優がだれなのか?がひと目で分かるように顔に照明をバウンスで当てるなどをして観る側が「俳優◯◯」を識別できるようにしがちだが、そういった部分はほぼ無い。
前編を通して、朝は薄暗く、昼間は光光と照らし、夕方も夕日を思わせる赤を強く入れ、夜は当時の照明であった行灯などを主要な照明とし行灯のある位置からの照明にこだわっているように見受けられる
この「電気の無い江戸時代を感じさせる」演出はこの作品の雰囲気づくりに見事に合わさっているといえるだろう
して草彅剛である
「ミッドナイトスワン」での実力はそのままに見事なまでに清貧な浪人っぷりを見せつけてくれる。
どこまでも静かなる男だった彼が、激昂するごとく声を張り上げるところまでのギャップの凄さ
そして凄みそ
草彅剛の俳優としての素晴らしさはあのシーンだけでも十分に伝わるだろう。
囲碁を打つシーンの指先まで伸びた差し指をふくめ碁打ちを思わせる部分から殺陣にいたるまで見事とも言えるだろう。
清原果耶のおとなしめのポジションながら武士の娘らしい気丈な振る舞いは美しさと可愛さと力強さが共存する女性の演技も素晴らしい
着物を着たときの所作も美しく、映画女優としてまた成長した姿を見せてくれる
國村隼の演技はもういうことなし
あの冒頭のいやらしい碁打ちの親父ポジションから心を入れ替えたあとの表情からなにから変わりすぎだろ…ってくらいに変わる。
國村隼さんのあの演技があるからこそ、この映画の中で「正々堂々と生きることの素晴らしさ」に華を添えているとも言える。
さらに人情の人となった萬屋の雰囲気などもこの映画には欠かせないものになっている。
中川大志はちょっとヘタレな若旦那ポジション
短く少ないながらもお絹に恋い焦がれる感の雰囲気はよくできていた。こういった役どころは彼は上手いw
斎藤工も見ごたえとして外せないだろう
仇討ちの相手として堂々たる雰囲気には切っ先の鋭い刃を思わせるオーラすら感じる演技だった。
碁打ちのシーンがおおく盤面がちらほら映り込むのだが囲碁を知っているし多少は打ったことがあるものの、盤面を読むだけの力があまりない自分でも碁打ちシーンのすべてがハラハラする。
そういう意味では囲碁の基本ルールを知っていればより面白いかもしれない。
知らなくても、冒頭に柳田格之進が指導碁をする盤面を覚えているだけで緊張感に包まれるのは間違いない
これぞ本格的時代劇!
草彅剛くんの見事な演技とカメラと照明によって、素晴らしい出来栄え。大きなスクリーンで観るべき1本になっています。