私の書いた本 2024年06月16日
田中泯たなか みん「自分を〈脱皮〉させてくれた、さまざまな人との出会い。
わくわくして、脱線して、2Bの鉛筆で踊るように書いた10年間の言葉たち」。
連載・私の書いた本 ~田中泯たなか みん 『ミニシミテ』。
田中泯 ダンサー。
独自の舞踊スタイルで半世紀近く、世界中で活躍を続けるダンサーの田中泯さん。山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』出演後、俳優としても活躍の場を広げています。そんな田中さんが、仲間と友ともに移り住んだ山梨での日々の営みや、これまでの人生を綴った新聞での10年の連載から選ばれた、89編をまとめた『ミニシミテ』。共感できるセンテンスが見つかったら、声に出して読んでくれると嬉しいと、田中さんが語る理由は――。(構成:山田真理 撮影:大河内 禎)
体を使った言葉で
僕は40歳の時に仲間とともに山梨へ移住し、農業をしながら踊りを続けてきました。現在は国内外での公演や俳優としての仕事もあって、以前に比べて野良仕事との両立はなかなか難しくなりましたが、それでも時間が取れる限りは畑に出るようにしています。
実は今こうして話していても、頭の中では「玉ねぎの準備で次はあれをしなきゃ」「この気温だと雑草がすごいだろうな」と気にかけている。春はやることが多くて忙しいのです。
2007年頃に地元の新聞社から、そうした日々の営みや、これまでの人生について書くエッセイを頼まれました。そこから始まり、10年前から「えんぴつが歩く」という連載に発展していったのです。
書き始めるのは、いつも明け方。自分で削った2Bのえんぴつで、400字詰めの原稿用紙に最初の一行を書く。調子が良ければ、どんどん次の行へ。「いや違った」と消しゴムで消したり、その手の動きを面白がった飼い猫にじゃれつかれて中断したり。
思い出せない漢字を辞書で調べることも増えました。それで知らなかった意味などがわかると「なるほど!」と思ってわくわくする。書くほどに違った思考が生まれてはどんどん脱線していって、「このえんぴつめ!」と自分に呆れることも。
それは、僕が踊るときの体の進み方ととても似ています。踊るように書く。その10年の積み重ねから編集者に選んでもらった89編をまとめたのが、本書『ミニシミテ』です。
「ミニシミテ」という言葉は
79歳になって
「ミニシミテ」というのは山梨でよく言う言葉で、「身に沁みて」とも「身に染みて」とも書きます。物事が体の内までしっかり伝わる感覚といったらいいでしょうか。
言葉でしか知らない感覚は、原料を知らない食品のようで僕は怖い。自分の体を使い、実感として確かめた言葉を書きたいと思いながら、現在も連載は続いています。
今年3月で、僕は79歳になりました。最近は、目が覚めてから自分の意識や感覚が体に馴染むまでに、時間がかかるようになったと思います。筋肉をあるレベルまで鍛えても、もとに戻ってしまうのが年々速くなっている感覚もあって。それは体が僕に「もう休めよ」、と言ってくれているのかもしれない。
でもある時は、ものすごく激しく踊っても体がどんどん反応してくれて、「うわあ、まだやらせてもらえるのかい」と嬉しくなる。
体の細胞は、つねに生まれ変わっています。細胞が年を取るのではないし、全身が一気に衰えることもない。たとえば膝が痛くて座りっぱなしになれば衰えるばかりです。少し痛さをこらえて動かすことで、必ず応えてくれます。体が年を取ることは、私たちの精神とともにある。これは間違いないでしょう。
僕たちは、日々初めての時間を生きています。「今日は何歳と何日目だ」という新しい体験を毎日している。
声に出して読んで欲しい
エッセイには虚弱で小さかった子ども時代から、10代で踊りを志し、さまざまな出会いを通じて自分を「脱皮」させてきた僕の人生のことも書いています。踊りの師匠である土方巽(ひじかた・たつみ)に始まり、大江健三郎、坂本龍一、樹木希林、ロジェ・カイヨワ、ヴィム・ヴェンダース――。
なかでも57歳の時に大きな脱皮を決心することになったのが、山田洋次監督との出会いでした。映画『たそがれ清兵衛』で初めて俳優に挑戦するまで、僕は声を使う仕事をしたことがなかった。そもそも学校の授業で音読するのも、嫌いで苦手だったんです。映画で初めて脚本(ホン)読みをした時もまったくうまくいかず、自分から役を降りようと思ったくらい。
思いがけず最初の映画で評価をいただき、俳優を続けるうちに声を出す仕事が少しずつ面白くなりました。言葉は単なる記号ではなく、発する人の声質や体調でも伝わり方が変わります。
昨今の政治家を見ていれば、同じ言葉を使っていても「この人の言葉は本物だ」「こいつのはウソだ」ってすぐわかるじゃないですか。(笑)
今では、大切に思う文章は必ず声に出して音読をしています。すると言葉が、自分の「身に沁みて」実感できるように思えるのです。
僕の本を手に取って、もし共感できるセンテンスが一つでも見つかったら、声に出して読んでくれると嬉しいですね。悲しみ、怒り、喜び。わきあがった感情を込めて音読することは、きっと面白い体験として新しい自分を発見することにもつながるのではと思います。
ミニシミテ、
作者:田中泯、
田中泯、
ダンサー、
1945年東京都生まれ。独自の舞踊スタイルを展開する世界的なダンサー。俳優としても活躍。85年から山梨県の山村で農業生活を開始した。他の著書に『僕はずっと裸だった』がある。
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