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125. ロビンソン/スピッツ

by MOEPPP



aiglon1018 チャンネル
https://www.youtube.com/@aiglon-bq5nz/videos
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曲名:ロビンソン/スピッツ
作詞:草野正宗
作曲:草野正宗
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投稿者:aiglon1018
投稿日:2024年9月21日
September 21, 2024
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1 「ロビンソン」とスピッツ
 この「ロビンソン」という曲が発表されたのは1995年(平成7年)4月で、今から約30年前になります。発売後からかなりヒットし、その年には最終的に160万枚の売り上げを達成したそうです。
 私はその時もう47歳の中年のおじさんでしたが、その頃は食後にテレビの歌謡番組などを家族で見ることもありましたから、この曲はそういう時期にテレビあるいはカーラジオで流れていたのを聴いて知ったのだと思います。そのせいで、翌年の1996年に「白線流し」というテレビ・ドラマが放送された時には、テーマ曲はスピッツだという話を聞いて、そのドラマも見ました。そのテーマ曲はドラマのための新作ではなく既発表の曲で、「空も飛べるはず」です。この曲もドラマのお陰か前年の「ロビンソン」のヒットのお陰か分かりませんが、かなりヒットしました。ドラマ自体は、もともと岐阜県高山市にある岐阜県立斐太高等学校の戦前からの伝統行事を象徴とした青春純愛ドラマです。テレビではこの舞台が信州松本市の架空の高校に設定されており、清々しい信州の地方都市とその周囲の風景が好ましく、それなりに面白く見ていました。主演は長瀬智也と酒井美紀で、それぞれ役柄にはまっていました。
 「空も飛べるはず」もスピッツらしい、押しつけがましさのない美しい旋律の曲ですが、この「ロビンソン」はちょっと簡単な表現が見つからないような独特の美しさが旋律にもバックバンドにもあり、おそらくスピッツと言えば「ロビンソン」として、今後も愛聴、愛唱されていく曲だと思います。
 作詞、作曲、ヴォーカルの草野正宗の才能は目覚ましいものです。特に彼の声の中音から高音への移行は伸びやかで無理なところがなく、聴いていて心地よさと爽やかさを感じます。メロディもシンプルで奇異なところがなく、一度聴いたら忘れられないものです。歌詞はかなり曖昧で解釈の余地が多く、それは聴く者の想像に委ねられている部分であり、あえて統一的解釈を主張する必要はないでしょう。

*ドラマ「白線流し」とヒット曲「ロビンソン」の詳しい解説はそれぞれ次のウィキペディア記事を参照してください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/白線流し
https://ja.wikipedia.org/wiki/ロビンソン_(曲)

2 歌謡ポップからJ-Popへ(雑感)
 「ロビンソン」「空も飛べるはず」「チェリー」はスピッツの代表作とされています。他にもヒット曲はあるのでしょうが、私はこの3曲しか知りません。その中ではやはり「ロビンソン」がもっとも印象的で、おじさんながら好きな曲でした。

 改めて思いますが、この時期から若者を対象とした音楽の音楽としての性質・傾向が大きく変化しました。それしか知らない若者世代には分からないでしょうが、それ以前を知っている世代には、この頃にはっきり音楽としての変化が起きたことが分かります。
 この新しい傾向の音楽は今はJ-Popとして大きく括られるジャンルとなっていますが、これらの新しいポップ音楽は、私のようなおじさんがついて行けるようなものではなく、この変化以後のポップ音楽、つまりJ-Popというものについては大して知りませんし、実はまったく興味がありません。
 その理由はおっさんだったからという以上に、音楽としての馴染めなさにあります。メロディ展開とコード進行が、それまでの覚えやすいメロディやコード展開から、一種の意表を突く複雑で独特の進行に変貌しました。このコード進行の特異さは外国人からも注目されているようで、それによってJ-Popはある種の魅力を彼らに与えているようです。
 メロディ展開は、魅力的と言う以前に独善的です。ヴォーカルの発声の仕方も、どちらかと言うと、子供のような高音の絶叫調が主流となり、歌詞は詩的に水準が高まったかと言えば、独りよがりで底の浅い歌詞が大半になりました。若者の音楽的感性と技術が一段高まったのではなく、独りよがりあるいはカオス化したのだと思います。それに対してこれらのスピッツの曲は、明らかにこの変化の前の時代に属するもので、その違いは明瞭です。
 だからといってどうだということもないのですが、こうした変化は音楽的には進化したとは必ずしも言えないだろうと思います。比較するのは変かも知れませんが、クラシックでロマン派から近代音楽に変わった19世紀後半から20世紀にかけてと同様に、進化したのではなく質が変化したのだと思います。その後20世紀に入って現代音楽と呼ばれるものにさらに変化した結果、クラシックは変化を自己目的化して自滅しました。今その揺り戻しが来ています。J-Popもいずれ行き詰まって、ある種の先祖返りを起こす可能性があります。
 この30年ほどは短い期間のようでいて、あらゆる分野で変化が起こりました。しかし今、その反動が起きている兆候も見られますから、10年後にはまた別の風景が広がっているだろうと予想します。

3 この編曲について
 この曲の魅力として、ヴォーカルの美しさと共に、イントロ(16小節)と間奏(8小節)のかなり長いギターのアルペジオの魅力があります。シンプルで反復の多い分散和音にすぎないのですが、これは一度聴くと忘れられない印象を与えます。

 この曲をDTMとして自力で耳コピで作るのは不可能なので、潔くダウンロード楽譜を利用しました。ヤマハ「ぷりんと楽譜」のバンド・スコアです。
 パートは、リードヴォーカル、ハーモニーヴォーカル、エレキギター3本、キーボード2台、エレキベースギター、ドラムスです。
 しかしやはりと言うべきか当然と言うべきか、割り当てられた元の楽器をそのままコンピュータソフトで指定しても綺麗な音楽にはならないことが分かりましたから、楽器の音源を根本的に変更しました。
 まず、ヴォーカルとハーモニーヴォーカルは両方ともオーボエに指定しました。歌のパートはどうしてもフルート、オーボエ、クラリネットなどの楽器に限られます。それ以外の楽器は特殊な場合以外には使えません。今回はフルートも試しましたが、オーボエに落ち着きました。
 ギターはエレキギターなのですが、これはキンキンギンギンと耳うるさく響くばかりなので、ギターはエレキベース以外はすべて「ハープ」のMIDI音源を指定しました。これによって音色は柔らかくなりました。
 またドラムスパートは主としてハイハット、スネア、ハイタム、ロータムなどかなり複雑になっていますから、だいぶ簡略化しました。特に楽譜ではシンバルが基本的に常に規則正しく叩かれていますが、これはあまりにも煩わしく響くので、要所だけに使いました。

 
 *なお動画後半に使用している2枚の美しい色彩の絵は、ジャン=ミシェル・フォロン Jean-Michel Folon のものです。フォロンは1934年にベルギーのブリュッセルで生まれました。ベルギーはブリュッセルを含む南部がフランス語、北部がオランダ語という2言語国家です。ベルギー出身でフランスで活躍した芸術家、歌手などは多くいます。フォロンは画家として身を立てるためにフランスに移住しましたが、世間的成功を収めるようになったのは中年以降でした。2005年、71歳でモナコで没しました。私がフォロンのことを初めて知ったのは、フランスの歌手、イヴ・デュテーユ Yves Duteil の30年ほど前に出たアルバム「私たちの言葉」”La langue de chez nous” 中の曲、「フォロンのデッサンのように」”Comme dans les dessins de Folon”によってです。ことのついでですから、この曲も紹介しておきます。

フォロンについて関心がある方は以下のリンクで記事をお読みください。残念ながら日本語版がないので、ここでは英語版へのリンクを書いておきます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Jean-Michel_Folon

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