十一人の賊軍
監督/白石和彌
なんといっても
孤狼の血(18)
孤狼の血LEVEL2(21)
碁盤斬り(24)
で知られる。バイオレンスなシーンも得意で随所に演出で入ってくる。
脚本/池上純哉
孤狼の血(18)
孤狼の血LEVEL2(21)
で白石監督とタッグを組んでいる脚本家。
出演/
山田孝之
仲野太賀
尾上右近
千原せいじ
岡山天音
本山力
野村周平
音尾琢真
西田尚美
玉木宏
阿部サダヲ
東映の看板シリーズ 仁義なき戦い の脚本で知られる
笠原和夫が作り上げていたプロットを再構築した映画。
笠原和夫といえば、さっきの「仁義なき戦い」はもちろん
二百三高地(80)
零戦燃ゆ(84)
などでも知られ
宇宙戦艦ヤマト完結編(83)
にも関わった方
この映画、山田孝之と仲野太賀のW主演ではあるが、いい意味でいろいろと覆してくれたすごい1本
1868年、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜を擁する旧幕府軍と、薩摩藩・長州藩を中心とする新政府軍(官軍)の間で争われた戊辰戦争。
そのさなか新発田藩(現在の新潟県新発田市)は幕府側につく連合軍と倒幕軍となった官軍のどちら側につくのか?で大きく揺れ動いていた。
妻のさだを手籠めにされた復讐から新発田藩士を殺めた政(山田孝之)は処刑される前に、自身を兄と思い込んだ花火師の家系のノロ(佐久本 宝(さくもと たから)に救い出されるが改めて捕まってしまう。そんな政ら罪人らに一つの救いの手が差し伸べされる。
それは攻め入ってくる官軍を新発田藩に入る前にある砦で足止めをすること。
罪人の10人に加えて、剣術道場主で直心影流の使い手の鷲尾(仲野太賀)や家老・溝口(阿部サダヲ)のむすめと婚約をしてる入江(野村周平)らが砦の守りにつくのだが、この作戦そのものが、家老・溝口による捨て駒だったことが判明するのだが…
いままで「孤狼の血」の白石監督
というイメージだったが、これを大きく覆してきたともいえる。
プロットが笠原和夫ということもあり、かなり骨太な映画であり、白石監督らしい、
重たく、考えさせられるエンディングに至るまで見入ってしまう。
150分を超える作品ながら無駄なところがないと行ってもいいほどの完成度
山田孝之はもう何をしても上手いから安心してみていられる。
妻を手籠めにされた復讐から罪人となり、そして砦を守る立場になっても、自分の考え最優先
妻のためとはいえ、自己都合がすぎる彼が最後に取る選択はとても胸に来るものがある。
主人公の一人ではあるものの、劇中での活躍はかなり抑えめになっている
愛妻家である部分をもっと演出に加えても良かったかもしれないが、
冒頭でそれを出しているとも言えるし、あの時代に藩士に対して取る行動そのものが妻への愛情の深さともいえる。ただ思考パターンなどは現代的な主人公と言ってもいいかもしれない。
そして仲野太賀
ウォーターボーイズで山田孝之に憧れた…ということもあって、過去にも共演があったとはいえ今作はかなり力が入っていたのではないだろうか?
主演作も多くありながらも、主演に近いポジションでの出演も多い仲野太賀ではあるが、今作では完全に山田孝之を喰っていると言ってもいいほどの存在感を見せてくれる。
特にラストの殺陣に関しては絶賛
覚悟を決め、仁義を通すために全身全霊をかけて戦う彼の姿はとても感動させられるシーンともいえる。あのシーンだけでグイグイ引き込まれる仲野太賀はまさにこの映画の顔ともいえる。
阿部サダヲは彼のイメージでもあるひょうひょうとした役どころではなく、かなりいやらしい立場。
新発田藩を守るためならなんでもする
人に恨まれようが、藩を守るために非道ともいえる作戦を立て、実行させる
相手を欺くためなら犠牲は厭わない。
この役どころがとてもとても憎たらしいほどで、観ていて阿部サダヲ演じる溝口が憎たらしく思えるほど
そう思ってしまうほど阿部サダヲの「大義のための小事には目を瞑る」家老の役どころはすごかった。
そして罪人の一人・なつ役を演じた鞘師 里保(さやし りほ)
元アイドル・モーニング娘。だって……演技がうまくてびっくりした。
彼女のポジションはある意味ストーリーテラーとなるラストの演技は素晴らしい。
他にも尾上右近にしても佐久本 宝(さくもと たから)、岡山天音、などなど演技派若手俳優が多数出ている
しかしやっぱり一気にスクリーンに引き込まれたのは、
爺っつぁん役の本山 力(もとやま ちから)
罪人が10人集められたときから白髪で存在感は見せてくれているが、殺陣シーンになると迫力がずば抜けてすごい!
一般社団法人 武士道剣会(ぶしどうつるぎかい)の方なのだが、四段の腕前を持つ方
とにかく太刀捌きはもちろん腰の落とし方から、抜刀後の所作そのものがかっこいい!!!
もう福本清三さんを思わせてくれる振る舞いを見せてくれる。
ラスト前の太刀のみならず槍術も含めて、時代的において殺陣シーンの重要度と見せ場であることを強く示してくれたともいえる
などなど俳優の素晴らしい演技によって見せ続けてくれた映画ではある。
そして衣装の大塚満さんの見事な衣装たちにも注目
衣装のすべてが、きちんと くたびれている というのが素晴らしい!
町人、侍、罪人、それぞれの衣装において、
生活感の先にある衣装 をきちんと仕上げている
碁盤斬り(24)のときも対象を担当されており、黒澤和子さんと並んで、時代劇には欠かせないスタッフであるといえるだろう。
そういった細かなところも含めて、きちんと作り込んでいるところは、時間とお金をきちんとかけている作品だからこそかもしれない
その一方で、やはり気になるのが、
歯の綺麗さ
主要な登場人物の歯がとても綺麗、白すぎるといってもいいほど白い歯が目立ってしまう。
劇中では笑うシーンなどはほぼないので、逆に白い歯が見えたときは少し目立ちすぎた…と思う
あとはキャラクターを深堀りしきれなかったのは惜しいところか?
主人公たちの政(山田孝之)や鷲尾(仲野太賀)らですら、バックボーンが十分でないのに加えて、10人の罪人それぞれが、過去があり、罪を犯しているにも関わらずさらりさらりと台詞で語られるだけとなっている。
ゆえに10人それぞれに見せ場が少しずつあるのだが、そこの盛り上がりに若干かけたのはあるかもしれない
現状で150分を超えているわけなので、キャラ立ちを指せるとなるとあと10分は必要になるかもしれない…故にそこは仕方のないところか?
とはいえ、上映時間全体で見応えも見どころもあり、見入ってしまう1本
2024年を代表する作品であることは間違いないので、絶対大きなスクリーンで観てもらいたい1本
1 comment
皆さん素晴らしい俳優さんばかり、特に玉木さんが出ると華がある