昭和の銀幕に輝いた俳優、勝新太郎。型破りで豪快、そして時には人を驚かせるほどの破天荒な生き方で、彼は日本映画界に大きな足跡を残しました。しかし、その裏には、映画やテレビでは決して見られない「本当の勝新太郎」が存在していました。
本作では、勝新太郎のスクリーン外での壮絶な生き様に迫ります。彼が抱いた野心、そして片岡雷蔵という大スターへの対抗心から、ギャラ交渉で一躍No.1スターにのし上がるまでのエピソードは、まさにスターになるまでの泥臭い奮闘を物語ります。彼は常に自分の信念を貫き、例えそれが上層部との衝突を招こうと、一歩も引かない姿勢でスター街道を突き進んできました。
そして、語らずにはいられないのが彼の「豪遊伝説」。夜の街に出かければ、次々に人が集まり、最後には100人規模の宴会が繰り広げられることも日常茶飯事。タクシーに乗れば、初乗り料金が100円にもかかわらず、運転手に1万円を渡し、お釣りは断る。時には、全財産を浮浪者に渡してしまい、店で支払うお金がなくなることすらありました。勝新は、「お金は楽しむためのもの」と考えていたのかもしれません。豪快で人情味あふれる彼の行動には、多くのファンや仲間が惹きつけられていきました。
また、勝新の破天荒さが最も表れたのが、巨匠・黒澤明との激しい衝突です。名作『影武者』の主演として抜擢されたものの、監督との意見の違いから降板に至ります。このエピソードは、勝新が単なる俳優でなく、ひとりの強烈な芸術家としての一面を見せた瞬間です。彼は自分の芸術に妥協せず、監督が誰であろうと、自分のやり方を貫こうとする強い意志を持っていました。
しかし、そんな勝新も、私生活では深い愛情を家族に注いでいました。特に妻・中村玉緒への思いは、常に彼の行動に表れていました。玉緒が倒れた際、彼女を元気づけようと、銀座の飲み屋で渡哲也を探し出し、彼に「くちなしの花」を歌わせたエピソードには、勝新の愛情があふれています。彼は単なる破天荒な俳優ではなく、家族への思いやりや人情深さも持ち合わせていたのです。
晩年、勝新は癌と闘うことになりますが、その中でも自らのスタイルを崩すことはありませんでした。記者会見では病気を公表し、時折タバコをふかしながらユーモアを交えて質問に答える彼の姿は、最後まで「勝新太郎らしさ」を忘れないものでした。その後、彼は多額の借金を残してこの世を去りますが、彼の遺志は玉緒によって受け継がれ、借金返済のために新たな会社を設立し、夫が残したものを守り抜いています。
勝新太郎の人生は、常に自由と情熱、そして周囲への愛情に満ちたものでした。彼の破天荒なエピソードの数々は、単なる「伝説」ではなく、彼が持っていた人間味そのものを映し出しています。昭和を代表する異端児として生きた勝新の姿に触れることで、彼がなぜこれほど多くの人々に愛され、語り継がれているのかをきっと理解していただけるでしょう。
スクリーンの中だけでなく、リアルな人生でも「勝新太郎」を貫き通した男の物語。その破天荒な生き様のすべてを、ぜひご覧ください。